Friday, March 15, 2013

1 グレイヘアを染めないと決めた日


わたしの髪は真っ黒で量も多く、ナチュラルなウェーブがあります。
あまり上手に髪の手入れができないわたしは、ショートヘアーにしていることが
多かったのですが、そんな真っ黒の髪にキラキラ光るグレイヘアが現れたのは、
三十代前半でした。

まだグレイヘアを認められない年頃で、美容師さんに勧められたヘアーマニキュアから
はじまり、もっと目立ち始めてからはナチュラルな材料で作られたヘアダイ
(といっても、やはり化学製品ですね)で髪を染め続けてきました。
四十代に入ってからは、その割合が一ヶ月に一度くらいになりました。

髪を染める頻度が上がるにつれ、わたしの内側で「面倒だな」
「染めるのは好きじゃない」という想いが沸き上がってきました。
何度か、染めないことを選択したこともありましたが、生え際の白が3センチくらいに
なると、黒い髪との間にくっきりと境目がつきます。
それはとても美しいと言えるものではなく、諦めてまた染める、を繰り返していました。

わたしは二十代の後半から生活の場をアメリカに移しました。
カリフォルニア州サンフランシスコで新たな人生をスタートし、その後バークレー、
オレゴン州ユージーンと居を移してきました。
人生の流れの中でたくさんの素敵な人々に出会いました。
特に、ヒッピー文化が色濃い場所に住んでいたこともあり、ナチュラルな生き方をする人々との繋がりが多く、
それはわたしの生き方にも素晴らしい影響を与えてくれたと思います。

オーガニック、自然志向、内側と外側を一つにした暮らし、自然と寄り添った暮らし、
地球、環境… 二十年以上、そんなキーワードの中で生きてきたわたしが、
一つだけ強く抵抗していたのが、髪を染めない、ということだったのです。

ところがある日、それは突然起こりました。
わたしはバスルームの大きな鏡の前に立っていました。
いつもぎりぎりまで髪を染めず、「どうする?」と自問するのが習慣化していました。
「さて、どうする?」
その日もわたしは、鏡の中の自分自身に問いかけました。
生え際は2センチほど白くなり、黒髪との境目ラインがくっきりと見えます。
「もう嫌だ。」
わたしは答えます。
「もう染めない?」
「もう、染めるのをやめよう!」
驚きの答えが自分の中から返ってきました。

染めるのをやめる、というのは簡単なことです。
でも、ここからが自分自身との戦いだということも、知っていました。
全体がグレイヘアに変わるまでの過程が絶えられず、染めてしまう人が
とても多いのです。
過渡期を挫折しないでどう乗り越えるか、わたしのグレイヘアの混ざり方や色は
どんな感じになるのか、大きなイメージチェンジを、全体としてわたしは
どう表現していきたいのか…
未知の世界への入口でした。

まずわたしはコンピューターの前に座ると、同じ想いの人を探し始めました。
始めに「美しい白髪」と日本語で検索してみると、白髪染めの広告が
たくさん出てきました。
四、五十代の美しいグレイヘアは見当たりません。
次に英語で「ビューティフル グレイヘア」と入れてみると、美しい女性達の写真が
次々と現れました。
「わぁきれい!」
新しい発見に嬉しくなったわたしは、その画像を集めたサイトを作ってみました。
ナチュラルで美しい女性達、そして男性達を見ていると、それは外側だけでなく、
生き方やたたずまいのような、内側の美しさが現れていることに気づきます。


あるがままで生きる、ということは、わたし達が何を想い、どう生きて来たかをも
現すことなら、それは単に髪を染めない、ということだけではなく、
ライフスタイルを大きく見つめ直すきっかけにもなるんじゃないかと思い始めました。

そう考えたとき、アンチエイジからプロエイジへという意識の変換は、
五十歳という今、わたしがやりたいことだとはっきりわかったのです。
数日後、わたしは”宣言文”を書きました。


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