Friday, March 15, 2013

2 プロエイジに至った背景


わたしは2012年にカリフォルニア、ハワイ島、そして南米チリ、パタゴニアと呼ばれる場所を旅しました。
それは、これらの場所に住む、自分の想いに忠実に生きている人達に会い、その人生のお話を聴くという、
 The Vision Walkerと名付けた自身のプロジェクトのための旅でした。

訪ねた場所は自然の中が多く、どの人も自然の一部として、寄り添うように暮らす体験をしています。
大地を調え、そのお世話をしながら暮らす人たちはみな、内側からその人となりが現れている
美しさを持っていました。
キラキラとした目で語られる、人生のお話にわたしは引き込まれ、美しさとは、表情と所作、
そして人生の物語というスパイスで味付けされた、その人すべてだと感じました。

この旅の最後に、わたしはパタゴニアから真っすぐに日本へ向かいました。
水を汲み、薪を運ぶ暮らしをした後の日本は、同じ星とは思えないほど近代的に見えました。
旅を始めてから二週間以上経ち、気がつくとグレイヘアがずいぶん伸びていました。
旅の間は友人の作ってくれた、ターバンを頭に付けていることが多かったので、あまり気にならなかったのです。
ところが、日本で家族や友人に会い始めると、みんなが口々に「髪を染めた方がいいよ。」
「そんなに白髪があったの?」「ちゃんと綺麗にしなさい。」と言うのです。

そういう言葉を受けながら、改めて日本という国を外側からの目線で見るとき、気づいたことがありました。
空港のカウンターでも、レストランでも、お店でも、そしてテレビ画面の中でも
わたし達が目にする人のほとんどは、若くてかわいらしい人たちです。
同年代の友人達を見ると、彼女達はーー君のお母さんであり、ーーさんの奥さんと呼ばれ、
自分のことは「おばさんだからね〜」と言います。

今の日本は、わたしの年代の女性達が、個性的に生きるにはとても生きにくい環境だということに気づきました。
と同時に、わたし達自身もまたアンチエイジングという言葉の魔法で、今の自分を見つめるのではなく、
かつてのわたし達の姿を追い求めています。

そしてわたしも、周囲の声に不安を覚え始め、旅の間に生きていた心と心で触れ合うという世界を離れて、
“若く綺麗に見せるために”髪を染める決心をしました。
その決心は決してワクワクする気持から生まれたものではありませんでした。
しなければならないという、自分への強制でした。

どれくらいの人が、ワクワクしながら毎月グレイヘアを染めているのでしょう。
わたしの周りの友人達に聞くと、ほとんどの人が「したくない。でも仕方がない。」と口を揃えて言います。

わたし達はこの年代の生き方を知らないのです。
外の世界には若くて綺麗なロールモデルしかなく、どこにも今の自分を楽しむというロールモデルが見当たりません。
たった一人で世界に向かっていく勇気を持つことは難しいのです。

それは旅の間に、ナチュラルで美しい人たちと出会い続けたわたしにとっても、難しいものでした。






No comments:

Post a Comment